AD2049年
関東と東海地方に大きな被害を引き起こした震災から20年
かつて以上の大都市に成長した近未来東京。テクノロジーの発達により、
不特定多数の個人による犯罪が多発、警察は厳しい取締りで
犯罪者達を次々と検挙していった。
だが捜査の網をかいくぐり、自らの流儀を貫き仕事をこなしていく者達が現れる。
犯罪予告に白昼堂々の大胆な犯行、まるでアルセーヌ・ルパンや二十面相のような
「怪盗」を彷彿とさせる彼らは「怪党(カイトウ)」と呼ばれた。
伝説の怪党「エグリバ」・・・政府の人間や様々な要人を狙い続けたその怪党は、
ある日飛行機事故でこの世を去ったと言われる。
謎に包まれた怪党について唯一確かなこと、エグリバが盗み続けていたものは、
金でも宝石でもない。ターゲットの身体を流れる「血液」だった。
事故から20年、死したはずの吸血鬼が再び夜空を舞う・・・
そんなニュースがテレビで流れ始めた頃、事務所に久々の依頼が届いた。
震災後生まれの17歳、細羽蒼真(ほそばそうま)は私立高校に通う高校三年生
両親はすでに他界し、唯一の家族である兄・門起(もんき)の仕事は
美容整形と占いをミックスさせ、大金を騙し取るオリジナリティ溢れる詐欺師。
蒼真の役目は整形を依頼する人間の身辺調査、それはまるで探偵業。
高校生探偵と言えば聞こえがいいが、所詮は犯罪の片棒担ぎ。
学費と生活費を稼ぐため、蒼真は調査に取り掛かる。
今回のクライアントは20代の女性、職業はOL。
簡単に済む仕事のはずが、調査が進むにつれ、蒼真は命を狙われるようになる。
次第に見えてくる依頼人を取り巻く宗教団体の影。
やがて蒼真は「血液を流れる記憶装置・ラーバルメモリ」の存在を知る・・・
血液を流れる記憶装置はその宿り主に100%完全再現の追憶をもたらす、
それが「larval(ラーバル) Memory(メモリ)(幼虫の記憶)」。
「Pupal(ピューパル) Memory(メモリ)(サナギの記憶)」
「imago(イマーゴ) Memory(メモリ)(成虫の記憶)」と続く
連作ハードボイルド活劇「インセクトメモリ シリーズ」スタート。